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映画クレヨンしんちゃん全作品(22作品)レビュー:前編

国民的アニメであるクレヨンしんちゃんドラえもんポケモンと同じく基本的に年1度のペースで劇場版のアニメが生産されているわけですが、2014年までで既に22作品もあります。まぁ22作品もあれば、

どれ観たらええんや?

という至極真っ当な意見が出てくるわけで。

世間では「オトナ帝国は神」「やっぱりアッパレ戦国でしょ」「ヘンダーランドの湯浅作画が神だから」と色々な意見が出ていますが、結局何から観たら良いかわからない、何が自分の好みに合うんだろう、と未だに右往左往してる映画版クレしんBiginnerも存在するわけです。そのような方々に向けて全22作品をざざっと鳥瞰したような記事を描こうと思ってキーボードを叩き始めました。

今回の記事の構成としては

  1. クレしん映画について
  2. 個人的ランキングベスト10
  3. 個別作品のレビュー

という順番で行います。

 

あっ(唐突)

そういえば今回こういう記事を書くに至った理由として、Amazon Prime Videoで全作品配信がされるようになった事が結構大きいです。

Amazon Prime Videoに関しては以前huluと比較する記事も書いたので気になる方はそちらも是非チェックしてみて下さい。

それでは以下、本編。

1.クレしん映画について。

クレしん映画と言うか、クレしん映画史に関してつらつらと述べていく。基本的には監督ベースで作品を眺めていくと理解が捗る。時系列順で全ての作品を並べると

ハイグレ魔王~ヘンダーランドまでは初代の監督、本郷みつる氏によって映画が撮られます。また金矛の勇者も実は本郷氏が監督。クレヨンしんちゃんという独自の枠組みを築き上げたという方で、ギャグとアクションが中心。

暗黒タマタマ~戦国大合戦までは2代目監督、原恵一氏によって。初めは本郷式のギャグとかっちょいいアクション中心の作品を作り上げていましたが、築き上げられた確固たる地盤のもとで大胆な挑戦がなされ、現在でもクレしん金字塔作品ともっぱら語られる「オトナ帝国」「戦国大合戦」が世に送り出されました。

ちなみに、この2作以降ではある種の絶望的な運命が決定付けらてしまいました。それは、常に「オトナ帝国」「戦国大合戦」の2作品と比較をされるという事、またその事によって鑑賞側が加点方式から減点方式で作品を評価するようになるという事です。かつては、「子供向けの映画なのに結構観れるじゃん」という、感動要素があくまでもプラスアルファ的な立ち位置であったのに対し、以後は「オトナ帝国or戦国大合戦と比べて○○が欠けてるじゃん」という観方がされる様になったのです。作り手に制約がかかり、この先長いクレしん映画暗黒期を迎える事になります。

ヤキニクロード~夕陽のカスカベボーイズまでは3代目監督、水島努氏によって撮られました。2作品とも原点回帰的な、ギャグに力を入れた作品になっていて、原恵一路線から離れようとする努力の跡が見てとれます。(とはいうものの、カスカベボーイズはまたやや感動路線に戻りつつある様な内容ではあったが…)

3分ポッキリ~ケツだけ爆弾までは4代目監督ムトウユージ氏の作品。ここから紛うこと無き暗黒時代に突入。陳腐化したギャグに見え透いた感動要素、「ほらお前ら、こういうのが泣けるんやろ」と言わんばかりの内容。作画のレベルも1段階下がります。

このムトウユージ氏の暗黒時代を晴らすべく、ケツだけ爆弾の次の作品、金矛の勇者では初代監督の本郷氏が呼ばれますが、不安定な作画で微妙な作品。かつてのファンタジー要素は感じれるものの、クレしん映画の汚名返上とはならず。

野生王国だけ5代目監督のしぎのあきら氏が作成。色々と試行錯誤のしているのが見て取れる内容で、劣化版(というかすごーーく幼稚な)「オトナ帝国」という作風。

スパイ大作戦~宇宙のプリンスまでは6代目の増井壮一氏。ストーリー性が強く、深く感動はしないし笑えるわけでは無いのですが、割と最後まで観れる作品。ただやはりかつてのクレしんには全く及ばない内容。

B級グルメだけは7代目監督の橋下昌和氏がメガホンを取る。ここからかつてのクレしん映画への回帰、ギャグ要素の復権が感じられ、夜明けが近い。

そして、ロボとーちゃんの逆襲は8代目監督の高橋渉氏が。監督以外に話が及ぶが、脚本に『キルラキル』の中島氏、作画にヘンダーランド時代の湯浅氏が参加し、暗黒時代を完全に脱する!?

 という長い映画史がありました。

3分ポッキリ~B級グルメまでを僕は暗黒期と定義しているのですが、約10年に及ぶ暗黒期においては、というより、「オトナ帝国」「戦国大合戦」以後においては、ファンの間でも長らく語られる「しんちゃん成長問題」というものがありました。これは永遠に歳を取らないしんちゃんが誰かの死に触れる事によって成長し、基盤となっている日常部分が揺らぐ、という問題です。まぁしんちゃんに涙を流させるというのは禁じ手に近いものであったわけで。人の死に触れるというのは今まででは「電撃!ブタのヒヅメ」と「戦国大合戦」しかなかったのが、「ロボとーちゃん」では再び描写されてたので、長年かけてその呪縛は氷解し、アリとなった感じはあります。

これが今までのクレしん映画史ですが、上述の通り、やっと長い暗黒期を抜けたという訳で、今回の記事で紹介する22作品以降の作品もきっと鑑賞に堪えうるような作品になっていることでしょう。

2.個人的ランキングベスト10

 まず初めに僕の一番最初に観たクレしん映画を述べておくと「ブリブリ王国の秘宝」です。これがある種の原体験の様になっていて、つまり、飄々としたしんのすけから繰り出されるキレの良いギャグ、日常に侵食する不気味な(ドラッギ―な)ファンタジー、グリグリ動く気持ちの良いアニメーション、謎のミュージカルパート、そして少し切ない幕引きというこれらの要素が、僕にとってのクレしん映画なんです。世間的評価を若干組み入れながらも、基本的には自分の感性に従って個人的ランキングを作成しました。

この後にも各個別の映画レビューを行いますので重複を避けるためにも映画のコメントに関しては数行に止めようと思います。

 

さて、それでは早速10位から。

10位 嵐を呼ぶジャングル

 低年齢の子供にも分かる様な、スラップスティックコメディ映画的笑いと、また現実に近いホラー、子供にとっては絶対とも言える親からの隔離、これらの割合が絶妙な塩梅である。あと、ケツだけ歩きの迫真の作画は腹抱えて笑った。それに最後の空中戦も見ごたえがある。

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 9位 B級グルメサバイバル

 クレしん映画暗黒期を抜け始めたあたりの、比較的近年の映画作品。新しい作品とあって、かつての飄々としたハードボイルドなしんのすけの姿はなく幼稚化した笑いが作中で散見されるが、それでも気持ちの良い笑いが提供され、ジャングル辺りのシークエンスは非常に作画のレベルが高い。またラストのミュージカルも大団円っぽくて好き。

 8位 夕陽のカスカベボーイズ

 「オトナ帝国」以後の作品の中でもなかなかに見ごたえのある作品である。アクションシーンと感動要素とクレしん映画には珍しい若干の恋愛要素があって、後にも先にも、この作品にしかない独特な魅力がある。ラストシーンのつばきちゃんとの別れからのエンディング突入はちょっと鳥肌立った。

 7位 アッパレ!戦国大合戦

世間ではこれと「オトナ帝国」が金字塔的作品として扱われているが、まさしくその通りで十分に大人が鑑賞するに値する厚みのある作品。だが。だが、だからこそ僕のランキングではこの順位に置いた。感動要素に焦点が当たり過ぎて、バランスに欠いてる。これはクレヨンしんちゃんでやる内容では無かったんだよなぁ。

 6位 ブリブリ王国の秘宝

 自分の中での原体験的な作品だけあって、思い出補正か、評価は高め。戦闘シーンはカッコいいし、スカイダイビングのシーンは笑えるし、敵はほんのり不気味で、魔人のシーンはサイケで、ラストの1コマもぐっと来る感じで、とにかくクレしん映画の大まかなフレームワークに沿いながらもそれぞれのステータスが高い水準で保たれていて最高。 

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 5位 逆襲のロボとーちゃん

クレしん暗黒期を完全に抜けきった事を象徴する近年での傑作。湯浅氏が作画に全面協力し、ロボとーちゃんの主観視点のシーンはCGとセル画を地続きに、スムーズになじませた様な画面を作ってる。ナンセンスコメディとしても優秀だし、中島氏による勢いある脚本も良い。巨大ロボの戦闘シーンは良い意味で狂ってるし、どこをとってもレベルが高い。

 4位 電撃!ブタのヒヅメ大作戦

クレしん映画最初期の中でも頭一つ突き抜けている作品、笑って泣ける非常にレベルの高い映画。特に最初のトイレ前での攻防シーンは、やたらと線が濃ゆい画面密度の高い作画と、場面に適合したクラシックミュージックが渾然一体となってホンマに笑える。これだけでも鑑賞する価値がある。またラストのブリブリざえもんとの別れも催涙シーン、涙腺に効く。 

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3位 ヘンダーランドの大冒険

 シュールレアリスティックで見てると酔う作品。冗談みたいに、ふとした瞬間死に足を突っ込んでしまいそうな不気味さが全体を覆ってる。奇怪さに関してはクレしん映画の中でヘンダーランドの右に出る作品は無いと思う。湯浅氏によるマカオとジョマとの追いかけっこシーンはファンの間でも未だに語られている名シーン。必見。

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 2位 栄光のヤキニクロード

 正直、これを1位に据える人が居てもおかしくない隠れた名作だと思う。2001年のオトナ帝国・2002年の戦国大合戦の次に放映された2003年の映画で、感動路線からは大きく舵を切り、スラップスティックコメディとしてステータスを全振りしてある。前二作に引っ張られて一般評価が(本来得るべき評価よりも)低いのが本当に不遇だ。そういえば、作品の後半で「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」のラストに対するアンサー的な演出があってファンサービスにも抜かりが無い。これがちょっとウルッと来たりする。

 そしてご存じの通り1位はもちろん…

1位 モーレツ!オトナ帝国の逆襲

 クレしん映画において初の本格的映画作品でありながらクレしん映画の魅力も最大限にまで引き出した歴史的金字塔ともいえる作品。基本的にクレしん映画史はオトナ帝国以前/以後で語られる程には良くも悪くも影響力がある。この映画はハッキリ言ってズルい。クレヨンしんちゃんで家族の絆や、現実の世相ベースの敵組織を扱うの、泣けるに決まってるでしょ。敵側の言い分にも一理あって敵側の提示する世界観がどうしても魅力的で感情移入できるし、そして一抹の不安と哀れさもあって、しかしお笑いの部分も抜かりが無くて。でも催涙シーンも満載。あ~~~~。ホンマ神。ラストの一連のシーンでのBGMを聞くだけでも未だに目頭が熱くなる。

 

記事クッソ長くなった…

個別映画のレビューに関しては後編で。