レビュー:Metal Gear Solid V: The Phantom Pain
悪に堕ちる。復讐の為に。
つい先日9月2日に待望のMGSV:TPPが発売されました。小学生のころから追ってきたゲームなのでやっぱりストーリーも気になり、いい年こいて買ってしまいました。
メタルギアシリーズは結構長いので、よくわかんねーよ、って言う方も多いと思うんですけど、時系列順で並び替えるとこう。(括弧の数字は発売順)
*赤色の作品は正史にあたる部分で、それ以外はパラレルワールドに近い(出来事は実際に起こっているが、細かい設定が違う)外伝扱いとされています。
1964年 MGS3(5)
1970年 MPO(6)
1974年 MGSPW(9)
1975年 MGSV:GZ(10)
1984年 MGSV:TPP(11)←今作
-----ここから主人公が変わる-----
1995年 MG1(1)
1999年 MG2(2)
2005年 MGS1(3)
2009年 MGS2(4)
2014年 MGS4(7)
2018年 MGSR(8)
MGSV:TPPまでは主人公がネイキッド・スネーク(BIG BOSS)であり、MG1からは主人公が息子のソリッド・スネークに変わり、ネイキッド・スネーク(BIG BOSS)は以降ラスボスに近い存在として登場します。何故、世界を救った英雄が、世界を滅亡させる巨悪となったのか。今作ではそのミッシングリンクが明かされるのです。
特別映像 “A history of METAL GEAR and PlayStation” - YouTube
そういう訳で、今作のキャッチコピーは「悪に堕ちる」な訳ですが、結論からいうと、ちょっと肩すかしなストーリーです。ゲーム作りの面に関しては歴代でもトップクラスの面白さだったんですけど。
メタルギアシリーズでは、緊張感溢れる潜入プレイを重視する人もいれば、一方で重厚な物語を重視する人もいるので、”プレイ”と”ストーリー”で分けてレビューをしていこうと思います。
プレイに関して
今作はシリーズ初となるオープンワールドになっています。巨大な箱庭の中を車やヘリ、馬を使って移動しながらミッションをこなしていく感じです。これが案外うまく機能しているんですけど、不満が2点あります。
ステージの数が少ないのに景色に大きな変化がありません。砂漠と岩肌と森ばっかり続いててすぐに飽きます。もっと、船とか施設とか、そういう人工物にも潜入したい感が… ステージの多様性を考えるとMGS4は紛争地帯(中東)・紛争地帯(南米)・街(東欧)・施設(アラスカ)などなど、潜入し甲斐があったんだけどなぁ。
あと景色が変わらないのに長々と移動をさせられるのはストレスでしかないです。ヘリで直接移動できるかと思いきや、ヘリに乗る→(ロード)→空中司令室→(ロード)→ヘリで降下、みたいな。むしろ時間がかかる。車で移動しようにも道には敵の拠点があって、移動途中に攻撃を受けまくる。馬で拠点を避けながら移動していくと、これまた時間が。う~ん。
そして、移動をたるくしている最大の要因が、実は一本道ゲーであるということです。岩肌は大体登れないので、大きく山を避けて遠回りする事に。オープンワールドのくせに案外行けない部分が多く、ちょっと小さく感じます。山ばっかりだし。そして移動ヘリも道沿いを移動します。いや、お前は山越えて行けよ。
そして、潜入プレイ面での不満も少しだけあります。3点だけ。
- 全力疾走スモグレが強すぎる
- チェックポイントが少ない
- 早い段階でステルス迷彩が開発できる
今作から採用された走りアクション。これをスモークグレネードと組み合わせることでゴリ押しプレイが可能です。MGSPWもスモグレゲーと言われている位、煙の効果範囲が広くて凶悪だったんですけど、今作もその要素を引き継いでいます。敵の視界を奪い尚且つ煙内の敵の行動を不能にするの、ヤバすぎ。これとダッシュを組み合わせると見つからないまま敵地最深部まで行けます。あるいは、敵に急接近し容易に近接格闘技で気絶・回収が可能です。なんだかなぁ。
そして、絶妙に少ないチェックポイントはイライラを加速させます。今作はオートセーブシステムが導入されており、一つのミッションでも長いと途中でオートセーブされチェックポイントからスタートします。が、これが少ない事によって、一度死ぬと途中で取得したアイテムも無くなり、全部集め直しになってクッソ面倒です。
あと、とあるミッションで、科学者を救出→襲ってくる敵からヘリで逃げる、というものがあったんですけど、そこそこの長さなので科学者を救出する時点でチェックポイントが設けられていました。しかし、敵から逃げる際中に崖に落ちてミッション圏外になると初めからやり直しに。科学者を救出するまでの1時間が吹っ飛んでキレそうになりました。こういう、セーブのタイミングが若干バランス悪いのはツラい。
最後に、シリーズ恒例の透明になれるステルス迷彩というアイテム。これが物語の中盤位で手に入るのでかなり緊張感を削ぎます。だって、使用に対して特にペナルティが無いし、あったら使うじゃん?(クリア後の評価に多少響くが、SIDE OPSという本編に関係の無いミッションでは全くペナルティが無い) 本編クリア後の隠しアイテムで良かったのでは…
ただ、ここまで不満点をつらつら書いてますけど、良かった点の方が圧倒的に多くて
- 敵に見つかった時のリフレックスモード
- 画面に現われる敵の視線
- 双眼鏡による敵・場所のマーキング
- 武器のカスタマイズの幅広さ
- 敵AIの学習
- 緊急回避のアクション追加
など、パッと思いつくだけでも6つは挙げられます。
オープンワールドになった事で、必然的に索敵→ルート構築→実際に潜入、という流れとなり、今まで以上に潜入してる感が強くなっています。そのゲームデザインに沿った作りがされていて、双眼鏡をワンボタンで使えて、そのまま敵をマーキング、ルートもマーキング出来るのは今作でのプレイを快適にしています。あと、広いオープンワールドで自分がマーキングし忘れた敵からの視線も、見つかった時にはどの方向から見られているのかを表す白い表示が出たり、ばったり出くわした時にも数秒間だけスローモーションになるリフレックスモードで排除して潜入を続ける事も出来ます。
そして、オープンワールドだと同じマップを何度か潜入するのですが、その度に敵兵が学習をして対策してくるのはかなり良かったです。
- 夜間潜入ばっかり→暗視ゴーグル着用
- スモークグレネード多用→ガスマスク着用
- ヘッドショットで狙撃→ヘルメット着用
- アサルトライフルで突撃→重装備兵士配備
という風に対策をしてきて、プレイヤーが潜入で飽きない様な工夫をしています。まだ未検証ですけど、多分潜入ルートの対策もしているのか、今まで良く使ってた経路に地雷が仕掛けられたり。「毎回このルートでクリア出来る」という事がありません。
お膳立てされて固定されたルートを辿るだけの従来のシリーズと比較すると、見つからずに潜入出来た時の達成感がぜんぜん違うので、完全ステルスでクリアした時なんかはホント脳汁がどばどば出ます。サイコー。
実際に止め時がわからないくらい面白いので、今作のゲーム性に文句をつけるのは初めに挙げたような数点に留まると思います。
ストーリーに関して
*以下ネタバレ注意
今作は初めにも述べたように、世界を救った英雄が如何にして巨悪と成り下がったのか、それを明らかにする「復讐」がテーマの物語です。
が、今回主人公であるヴェノム・スネーク(BIG BOSS)の容姿を見ると
このように、MGSV:GZのラストで事故に巻き込まれ、左手は義手・頭には何かの破片が角の様に突き刺さった容姿になっています。あとこの画像ではわかりにくいけど、眼帯が3点留めになってます。
ちょっと待てよ…
これがMGS4に出てくるBIG BOSSで、明らかに辻褄が合わない。
眼帯はさておき、この手が義手である可能性はあっても、流石に破片が全く無いのはおかしいんじゃない?
「足りない部品をソリダスやリキッドからかき集め…」とは言ってるけど、流石にこの頭の破片は説明仕切れていないでしょ。
という事で以前からファンの中では、ヴェノム偽者説が流れていました。
- ヴェノム=チコ説
- ヴェノム=グレイフォックス説
- ヴェノム=メディック説
などの多岐にわたる説が多くのブログで検証されていました。
またこれと同様に、今作は病院の脱出から始まるのですが、PVで出てくる包帯男の正体も考察されていました。
病院から脱出するときに出てくるキャラで、これも
- 包帯男=チコ説
- 包帯男=グレイフォックス説
- 包帯男=BIG BOSS説
- 包帯男=オセロット説
- 包帯男=ロイキャンベル説
などと様々な予測がされていました。
とかくまっさらな気持ちでゲームの電源を入れプレイしたのですが、最初の病院のシーンで、ヴェノム(CV.大塚明夫)・包帯男(CV.大塚明夫)という事が即座にわかり、そして包帯男の意味深な台詞「俺は…お前だ」
まぁ意味深でも何でもなく、この時点で包帯男=BIG BOSSであることが確定です。プレイして10分もしないうちに判明します。
じゃあ、このヴェノムスネークってのは何者なんだ?という疑問。これに対して、発売前に海外ではかなり鋭い考察がされていました。
Who IS the Medic? - MGSV: Ground Zeroes [Theory] - YouTube
MGSV:TPPのラストシーンでBIG BOSSとともに事故に巻き込まれたメディック(衛生兵)の顔が執拗なまでに隠されています。そして声色もどこかスネークに似ている…?
ネタバレになるんですけど、そうです。ヴェノム=メディックです。これはゲームのトゥルーエンディングで明かされました。伝説の傭兵がたまたま飛行機に居合わせたメディックでもなれるって、一体どういう事なんだ????
好意的に解釈をすると、凡庸な一兵士はゲームのプレイヤーを投影した存在(最初に名前生年月日キャラメイクがあるし)で、これまでの作品を通して歴戦の傭兵を操作してきたプレイヤーが凡庸な一兵士を操作しても同様の動きが出来て、最後にBIG BOSSから「お前こそが真のBIG BOSS」だと言われる=プレイヤーこそがBIG BOSSだ、というファンサービス、なの、か、も…??
いや、それにしてもひどい。だって「復讐」がテーマの今作、本物のBIG BOSSは復讐に加担せず、一人バイクで旅へ。闇墜ちなんてなかったんや!なエンド。マザーベースの仲間の多くがスカルフェイス(今作のラスボス?)に殺されたのに、本物は知らぬ存ぜぬで、影武者に全部丸投げって、めちゃくちゃでしょ。
これがラストシーンで、尻切れトンボな終わり方をする。う~ん。最初に言った様に、肩すかしな物語でした。
と思いきや、実は限定版の方にカットされてしまった幻のエピソード「蠅の王」が収録されていたみたいです。(僕は通常版を購入してるので知らなかったけど)
SPOILER - Metal Gear Solid V - Episode 51 - YouTube
ビジュアルアートとステージのコンセプトとムービーは出来上がっているのに、結局本編には収録されませんでした。しかし、これ明らかにラスボスに相応しいっぽいエピソードなんですよね。だって今作のボスっぽい方々は、
- スカルフェイス:戦わずに勝手に重傷。ヒューイが止めをさす。
- ヒューイ:スパイかつ偽善者。戦わずに追放。
- 炎の男(ヴォルギン):戦わずに消える。
- マンティス:EP51で補完
- イーライ:EP51で補完
なんだもの。
本編ではイーライが基地からサヘラントロプス(二足歩行型兵器)と子供たちを連れて逃げ出したエピソードに対する説明が何も無いし、これ(EP51)が真のラストの様に思えてなりません。
それでは何故本編に収録されなかったのか?それは以前からも言われている様な小島監督とコナミの確執が関係しているのかも。あまり無責任なことはいえないけど、もともとコジマプロダクションというメタルギアシリーズの開発チームが解散させられたという噂が海外から流れてきて
で、スネーク役の声優である大塚明夫さんによって確定されました。
コジプロは解散させられてしまったが、チームの奮闘により作品はどうやらほぼ完成となった。掛け値なしに最高の傑作となった筈!早く「待たせたな」と言いたくて仕方ない(笑)これが最期になったとしとも…MGS は 不滅 です! コジプ... http://t.co/9zeTNDpNxp
— 大塚 明夫 (@AkioOtsuka) 2015, 7月 10
それが関係をしているのか、コナミのプロモーションはクッッッッソ適当です。
何がメタ男だ、やる気ねーだろテメー。
まるで売れて欲しく無いみたいなオーラが漂っていてやばすぎる。他の販促もあんまりしていないようで、そのことを口にしようとした大塚さんがファミ通の人間に止められる映像も。
納期を延ばして開発費を使いまくる小島監督にコナミが痺れを切らしたのか、あるいはコナミの社長が変わってコンシューマーゲームから撤退する為早期に投資回収をしようと厳しめの納期になったのか、それはわかりませんが、MGSV:TPPは未完成の作品であると言っても良いのかもしれません。そうでなければ、
- 序章:EP1(大体30分)
- 第一章:EP2~EP30(大体25~80時間)
- 第二章:EP31~EP45(大体5時間)
- 第三章:EP46(EP1の焼き増し)
という歪な配分にはならなかったと思います。
MGSV:GZがそもそもMGSV:TPPのプロローグなら、エピローグも別売りをしてもらわないと、28年間も続いたメタルギアサーガが打ち切りで終わってしまう…
ストーリーの評価に関してですけど、未完成のものを評価することなんて出来ません。どういう形でも良いからマジで完成させてくれ~~~~!!!!!!!
ファンなのでお布施に励みます。それでは。
メタルギアソリッドV ファントムペイン SPECIAL EDITION
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