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レビュー:わたしは真悟

わたしは真悟

好きな作家のうちの一人、楳図かずおの『わたしは真悟』を読んだ。

 内容が結構難解で、頭からふわふわ抜けてく感じがある。こう、汗腺から流れ出て蒸発していくイメージが。記憶に留めておきたいのでレビューします。

 

楳図かずおと言えば、『漂流教室』や『14歳(フォーティーン)』が代表作として挙げられるけれども、ホントSFの鬼才です。

 

 

 上記の作品も含めて感じられるのは

  • 人間文明の限界
  • 万物に霊性を認める(機械動植物との交信)
  • 全能(神の代理)である機械
  • 意識とは何か(霊性の話に近いかも?魂とか)
  • 愛とは何か
  • 消費社会への批判
  • 子供としての子供

こういう内容を取り扱ってる。というか、スト―リーにおける世界観に作者の哲学が組織液みたいに染み出してて、美麗な(細緻な)イラストを通じて刷り込まれていく感触がある。

 

形而上学っぽい内容を扱ってるけど、割と人間の直感的なものというか漠然とした不安というか、そういうサムシングに基づいてるし、そんなに脳に入るときに抵抗があるわけでもない。例えば、『14歳』とかだと、このまま産業の発展が続いたら動植物も滅んでしまうので、植物全体の意思として、人間に葉緑素を埋める行動に出る、みたいな。ありえないけど理解できる?みたいな。

 

まぁ楳図かずおについての話は長くなるから本題にうつろっか。

 

赤と白のボーダーでおなじみ ホラー漫画家の楳図かずお 

*ご尊顔

あらすじ

町工場労働者の息子「近藤悟(さとる)」と外交官の娘「山本真鈴(まりん)」の二人の小学6年生は恋に落ちる。しかしまりんの父親の海外勤務にともない、身分違いの2人の恋は引き裂かれる。大人になることを拒否した2人は、自分たちの子供を作るため、さとるの父親が働く町工場の産業用ロボット「モンロー」の指令に基づき、東京タワーの頂上から救助にきたヘリコプターに飛び移る。その瞬間、2人の秘密の遊び道具であった産業用ロボット「モンロー」は自我に目覚め、意識としての進化を開始。産業用ロボットは、みずからの出自を求める旅を重ね、伝えられなかったさとるの愛の言葉を、まりんに伝えるべく、成長を続ける。

自らを両親の名前から1文字ずつとって「真悟」と名づけた「モンロー」は、自分が単なる産業ロボットではなく、人間の悪意をエネルギーとする秘密兵器を生産すべく秘密プログラムのブラックボックスを植えつけられた存在であり、母親であるまりんを自分自身が苦しめているという自らのを知る。真悟はさらに、世界中の意識とつながる意識としての進化を続け、エルサレムを破壊した瞬間に神を超えた存在「子供」としてこの世に生まれる奇跡をおこす。

だが、その後は、エネルギーと記憶を失い続け、聞くことの出来なかった、まりんの返答をさとるに伝える旅に出る。真悟の全てのエネルギーが尽きるとき、真悟はさとるに再会し、最後にアイの2文字が残った。

引用: わたしは真悟 - Wikipedia

 

Wikipediaから引用してみた。

 

一応自分の文章でも記しておこ。

 

工場労働者の父を持つ悟(さとる)は外交官の娘である真鈴 (まりん)と出会い、二人は(悟の父の)工場での逢瀬を重ねていく。工場にある産業用ロボットのモンローに自身たちのデータを打ち込んでいき、モンローは(本来ならありえない)知能を獲得する。ある日、イギリスへと引っ越しする事になった真鈴は、悟との駆け落ちを決意。2人は子供を作ろうとし、モンローに尋ねる。モンローはディスプレイに「333カラトビウツレ」とだけ表示をし、2人は東京タワーを登る事を決意。

 

全体を大きく2分するなら、前半のあらすじはこんな感じ。

物語の骨格はロミオとジュリエットみたいな話で、東京タワーのエピソードを契機に二人は離れ離れになって、でもお互いに愛を確認し合って再開を目指す、みたいな。(実際には再開を特に目指すわけではないんだけど)

 

そして、この東京タワーのエピソードは作中でもかなり重要。悟と真鈴の2人が東京タワーから決死の思いで救助ヘリに飛び移った瞬間、機械のモンローには2人の子供としての意識、「真悟」の人格が生まれます。2人の愛から生まれた意識としての「真悟」は離れ離れになった、悟から真鈴への愛を伝えるメッセンジャーとして冒険をする。

 

ここで結構面白いのが、まぁ機械に意識が宿るとして、無機質なロボットアームが全体の行動を統制しているという。普通は頭とか中央部なんだけど、ねぇ。ロボットアームに視覚センサーが付いていたから、話を繋げていく上でアームがまるで本体の様な扱いになったのかな?うーん。手に意識があるのは何か特別な意味合いがある気もするんだけど。

 

怒涛の後半

「真悟」は真鈴を探す旅を続けるなかで、あちこちのコンピュータと連携を取ります。例えば、自分が乗った船や、それを経由して衛星にアクセス。今では割と当たり前だけど出版された時代を考えると、高度に通信の発達した現代を予言してて地味にすごい。衛星画像から真鈴を見つけるとか、なんかGoogle earthっぽかった。

 

閑話休題、あらゆるネットに接続をした「真悟」は、全知全能の神として存在する事になる。

ume002.jpg

*適当にネットから拾った該当画像

 

知識のストレージのレベルをわかりやすく表示する為に、「真悟」の瞳は■→▲→●と変化していってます。

 

で、「真悟」が神となった一方で、(イギリスでの日本人を狙ったテロから逃げつつ)真鈴はイェルサレムの神殿にて外国人の男に言い寄られていた。なんとかそれを振り払い子供として存在しているうちに悟への愛を伝えようとする真鈴。そんな真鈴の窮地を救うべく、「真悟」は外国人の男に向けて衛星を落とす。(ヤバすぎ)

 

この、”子供として存在しているうちに”というのは、東京タワーのエピソードで

イメージ 1

というシーンがあって、2人は子供のうちに結婚する事を誓っていた事に由来。作中では明確に子供から大人になる瞬間(というか、大人に向けて体内で時計が進む)の描写があって、大人と子供を完全に別の生き物として扱ってた。実際に、物語終盤では真鈴の胸も膨らみを見せていた。なんか、『なるたる』とかもそんな感じのシーンあったなぁ。

 

なるたる 全12巻 完結コミックセット(アフタヌーンKC )

なるたる 全12巻 完結コミックセット(アフタヌーンKC )

 

 

女性とかだと明確なイニシエーション(生理の事)があるんだけど、男性が子供から大人にきっぱりと変化するみたいなのって実感湧かね~。精通とか?(本作でも悟の大人になるシーンは存在しない。構成上必要なかったから?)まぁ『14歳』でも大人と子供で明確な対立軸を作っていて、楳図かずお的にも重要なポイントなんだろうね。

 

そして、真鈴が大人になるギリギリの所で「真悟」は真鈴から悟への返事を受け取り、今度は新潟にいる悟のもとへと向かう。真鈴との邂逅を機に「真悟」の神性は失われていき、思考は鈍る。ただ、両親の愛を刻んだ無機物はアームだけの姿になっても動き続け、最後に”アイ”の2文字を悟の前に記し、活動を止めた。

 

これって結局何の話??

ワシもわからん。

 

レビューのつもりで書き連ねてたんだけど、気になる点がポコポコ湧いてきて、これはもう一回ぐらい読まないと他人にキッチリ伝える事が出来ないっぽいです。

でも上で書いた以外に気になる点は2つで、

  • 作中の語り部の存在
  • 「奇跡は誰にでも一度起きる だが起こったことには誰も気づかない」

作中の語り部は最初は「真悟」(=モンロー)であるような感じですけど、アームが動きを止めてからも、鳥瞰的な語りは進められていたし、じゃあ結局誰の視点から物語は語られているのか???全知全能であった「真悟」の、作中の時間軸からは切り離された、超越した場所からの語りかな~と個人的には思った。真悟やモンローに対する言及が「私」だし、どの時間軸にも同じスタンスで現われてるし。でもそうすると、真悟の幽体(意識とか魂)の可能性もあるんか。ぐぐぐ。

 

あと、「奇跡は誰にでも一度起きる だが起こったことには誰も気づかない」という文言。これは物語の一番初めに書かれていて、この作品全体を通してのテーマなんだけど、”奇跡”とは何か、”誰”に起こったのか。真っ当に読めば、悟と真鈴の間に真悟が生まれた事、東京タワーからヘリに飛び移った事で産業用ロボットに意識が生じたという、ポケモンで言うセレクトバグみたいな事なのかなぁと。実際には意味の無い挙動やコマンドで誰も気にしないんだけど、それが別の観点では大きな意味を持ってるぜ、的な。(完全に『クリームソーダシティ』じゃん)

 

 

でも、作中の奇跡って1つだけでは無くて、イェルサレムの神殿で真悟が母たる真鈴に触れ赤ん坊の姿を獲得したのも勿論奇跡だしなぁ~。このテーマから何を言いたかったんだろうか… ”奇跡の連続で私たち人間はココにいるのよ”というJ-POP風味なお説教ではないだろうけど…

 

 

複数のテーマが同時多発的に作中で進行するので、話すべき内容も多いし、一気読みで論理的な繋がりを追えてない所もあるな~

 

まとまらないレビューだけど、備忘録だと思って勘弁しちくり。