クソザコナメクジ

Twitterの延長

レビュー:あん

この前、地元の映画館でアンコール上映をやってたあんを観たのでレビューを書こうかなと思います。そもそもこの映画、留学の時の知り合いにこの前Skypeした時、「あんと言う映画を知ってるか?最高に面白いぞ。日本人なのに観てないのか?」と言われ(煽られ)て、ちょっと気になっていました。

*全国のイオンシネマで観れるみたい。

 結論から言うと、この映画は映画館で観る事はお勧め出来ません。マジで泣けますから。先日鑑賞しに行った時、シアターには10人ほどしかいなかったのですが、映画の最中にあちこちから鼻を啜る音や咽ぶ音が聞こえてました。僕も案の定ボロボロに泣いてしまい、僕を含めてほとんどの人がエンドロールの最中に退出してました。(まだ暗いままなので泣き顔を見られずに済むし。)何と言う催涙映画である事か。ポテンシャル的にはマイベストに難なく入り得る感じの面白さ。原作もちょっと気になりました。時間があったら読みたいな…

([と]1-2)あん (ポプラ文庫)

([と]1-2)あん (ポプラ文庫)

 
 あらすじ

人生に暗い影を持つ千太郎は、甘いモノが苦手なのにも関わらず、桜咲き乱れる並木道の路傍のどら焼き屋で雇われ店長をしていた。ある日、徳江と名乗る老婆が店に現われ、自分を雇ってくれと拝み倒してくる。明らかに不自由な手をした老婆を見て千太郎は一度はあしらうものの、再度訪れた際に手渡された餡の美味しさに感動し、彼女を雇う事に。今までは業務用の餡子を使っていたが、徳江による手作りの餡で店は大繁盛。噂が噂を呼び、店には行列が出来る事になった。徳江はやがて千太郎の元に毎日失敗したどら焼きを貰いに来る母子家庭の中学生ワカナとも親交を深め、張りのある、順風満帆な日々を送る。しかし、ある日徳江の手が不自由であるのはハンセン病の為である事が周囲に知れ渡り、客足はピタリと途絶えてしまった。責任を感じて店を去る徳江。そんな徳江を引き留められなかった千太郎。ワカナは苦悩する千太郎を見かねて共に徳江の居るハンセン病隔離施設へと向かう。

まず物語の中心となるのはどら焼き屋を中心にして出会う3人の人物です。冒頭も終わりも、あまりに眩しい陽の光と爛漫に咲き乱れる桜。陽の光を眩しすぎるとまで感じるのは登場人物の人生に影が差し、どことなく表情が暗いからでしょうか。前科のある雇われ店長の千太郎ハンセン病の老婆徳江。母子家庭の女子中学生ワカナ。 ハンセン病を患う徳江と彼女を取り巻く、無理解な世間と言う環境の変化によって、それぞれが「陽のあたる社会で生きたい」と強く願うようになるというのが、大まかな筋になります。

感想と考察

まずこの映画の素晴らしい点と言うと、俳優・女優の何とも細やかな機微を表わした演技です。特に徳江役の樹木希林による、長い人生を感じさせる重々しさ、全ての"声"に耳を傾ける慈しみ深さ、死を連想させる静謐さ、あらゆる魅力を感じさせる演技には驚かされました。彼女でなければ、これほどまでに説得力のある物語にならなかったのかな、と思います。また、永瀬正敏の、表情で語る演技も良かった。ちょっと言葉足らずでも、目や顔つきで語る不器用な店長役がぴったりハマってて、その口数の少なさがこれぞ邦画!という感じでした。

また物語にマッチした音響の使い方にも驚かされました。ハンセン病隔離施設で人生の大半を費やし、子供を産む機会さえ取り上げられた徳江は言います。「何かになれなくとも、人生に意味はある。」それは自然が常に声を発していて、その物語に耳を澄ませる事をしてきた彼女なりのものなのです。本作の音響はそんな物語に沿うように、けばけばしいBGMを多用せず、そよ風の囁きを、渓流で砕ける水の音を、鍋の中でくつくつと煮られた小豆の音を、しっかりと拾い、存在感を引き立たせています。変に見どころを作ろうとしない自然体な音の運びには納得させられました。

あと、何気にタイトルのフォントにも僕は勝手に意味を見出してしまいました。「あん」という文字は、バランスを欠いた歪な形で、ハンセン病で指が自由に動かない徳江により書かれたものなのかなぁと。そんな徳江から精一杯伝えられた文字「あん」には、字義通りの意味以上に、作中で説かれていた餡作り、それを通した人生の意味をその文字に見出せるようにも思えて…。こういうの物凄く僕の好みなんです。

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そして何より、それぞれが一歩前に踏み出す物語がすっと心に沁みます。上述したような登場人物3人の変化に僕は泣いてしまいました。

千太郎は甘いものを食べるよりもお酒を飲むのが大好きで、そんな千太郎がどら焼き屋の店長をやっている事に徳江は疑問を投げかけます。「それじゃあどうして居酒屋の店長にならなかったの?」 そう、かつて千太郎は居酒屋で働いていたのですが、客のもめ事を仲裁した際に、誤って客の命を殺めてしまい塀の中に入れられていたのです。出所した後、今のオーナーに慰謝料を肩代わりしているという負い目もあり、やりたくも無い、好きでもないどら焼きを焼く張りの無い雇われ店長の日々に突き落とされます。

そして徳江との出会いは彼の憤懣やるかた無い気持ちをゆっくりと氷解させていきます。小豆の旅の話を聞いてあげる、小豆をもてなしてあげるという、徳江の丹精込めた餡作りは仕事の楽しみを生み、生きる活力を与えました。

しかし、千太郎が前に進もうとする度に災難は続きます。店が繁盛し始めたときに徳江のハンセン病の噂が広まる、独自のメニューを開発して”自分の店”を運営しようとした矢先にオーナーにより店をお好み焼き屋に変えられる…。

それでも、徳江の死を契機に、いや、彼女の遺言を契機に、千太郎は自分のやりたい事をやり通します。最後のシーン、彼はお好み焼き屋には居らず、公園で小さな屋台を出店し、声を張り上げていました。「どら焼き要りませんか?」それは千太郎が刑務所から出て、初めて本当の意味で”塀”の外に出た証ではありませんか。陽の下で彼は納得いく人生をスタートさせたのです。

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徳江は小さな、それこそうら若い乙女ともいえる年齢で自身がハンセン病である事を知らされ、隔離されます。子供を身ごもりましたが、結局はハンセン病と言う事で産むことも許されず、(物理的に)塀の中に囲われたままでした。人権が奪われ、また蹂躙されたような日々を過ごさねばならない彼女は、自分が生きている意味は無いのではないかと考えるようにもなりました。しかし、やがて彼女の周りの自然、それの発する声に耳を澄ませるようになったのです。感性の世界への遊離、それは塀に囲われていた彼女が唯一自由になる方法だったのかもしれません。そして「この世を見るために、聞くために生まれてきた」「何になれなくとも生きる意味はある」という思いを強くします。

それでもやはり思うのは、陽のあたる社会で生きたい、という事。週に一度の散歩の際に、徳江は悲しい目をした千太郎を見つけます。自分が子供を産んでいたなら丁度このくらいの年齢・背格好になってたであろう千太郎。自分が社会で働きたいという思いと、千太郎に対する親心に似た感情を抱いた徳江は千太郎の元で働き、50年間ハンセン病の施設で作り続けていた餡子作りと共に、彼女なりの生きざまを伝えようとします。

死期を悟って外の世界に思い切って飛び出した徳江は、結局のところハンセン病に対する世間の無理解と偏見と差別を再認識しただけでした。しかし、外の世界に触れ、まるで自身の子供の様な千太郎との交流を経験し、満足して死んでいった徳江は、最後の最後に自分の人生に納得できたのだと思いました。

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ワカナは母子家庭の中学生であり、いわゆるネグレクトの様な虐待を受けて育っている様に窺えました。中学三年になって高校進学を望むも、母親からは必要ない働け、と一蹴されます。母親から自由になろうにも行動に移せないワカナは、見えない”塀”にとらわれているかの様です。そして母親の愛を受けられず居場所を持たない彼女は、アパートに小さなカナリヤを飼い、そこに愛を注ぎます。

そんな彼女も徳江や千太郎とのやり取りに触れ、人の温もりを知り、そして徳江と家出した際にカナリヤを預かってもらう約束をします。やがて、実際に徳江にカナリヤを預けますが、徳江はすぐにカナリヤを逃がしてしまいます。籠の中に囚われたカナリヤの姿が自身の姿と重なったと話す徳江にワカナは何を感じたのでしょうか。最後のシーン、満開の桜の下に高校の制服姿で映るワカナ。きっと彼女も自身が納得のいく選択を行えたのでしょう。

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このように三者三様ではありますが、各々が出会いを通じて”塀”の外に出て、納得のいく人生を生き始めた、達成した、という変化を最後に見せてくれたのです。脚本、満点。他にも、千太郎と徳江との関係性にも泣かされた。千太郎は服役中に母親を失い、その償いの気持ちも助けて、徳江に優しく接し、徳江は自分が授かっていたであろう子供を想像し、親心を以て関わっていた。何と悲しくも暖かいことか。ストーリーが進行するにつれて、それぞれがどのような思いにあったのか明らかにされていって、もう涙腺ボロボロ。

皆さんにも鑑賞を強くお勧めします。

あ、もっかいAmazonのリンク貼っとこ。

 

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最近観た映画たち

社会人までラストスパートと言う感じ。一番激務と噂の職場に配属されたので今のうちに出来るだけ映画を沢山観とかないと(使命感)

・ビューティフルマインド

ビューティフル・マインド [DVD]

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 ・アメリカンビューティー

アメリカン・ビューティー [DVD]

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 ・ロードオブウォー

ロード・オブ・ウォー [DVD]

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 漫才ギャング

 桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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 ・真実の行方

真実の行方 [DVD]

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 ・ゲスト

ゲスト [DVD]

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 富江

富江 [DVD]

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 ・007 ロシアより愛をこめて

 ・007 ゴールドフィンガー

 それでも夜は明ける

それでも夜は明ける [DVD]

それでも夜は明ける [DVD]

 

 ・ドーンオブザデッド

 パルプフィクション

パルプ・フィクション [Blu-ray]

パルプ・フィクション [Blu-ray]

 

 怒りの葡萄

 ・ターミナル

ターミナル [DVD]

ターミナル [DVD]

 

 ・あん

 

ビューティフルマインドゲーム理論で有名な、あの数学者ナッシュが主人公で、統合失調症との闘病に関する映画。ただ、Wikipediaで見る経歴の方がぶっ飛んでるのでコスパ考えるとそっちの方が良いかも。映画自体は秀作と言う感じ

参考:ジョン・ナッシュ - Wikipedia

富江漫才ギャングは共にサイアク。絶対観ないように。前者は伊藤順二の作品を知っているものにとっては、あの原作特有の薄暗さ・不気味さが無くて物足りない。後者は劇中の漫才が寒すぎて目も当てられない。でも石原さとみは可愛い。それだけ。

富江 上巻 (ASスペシャル)

富江 上巻 (ASスペシャル)

 

 

うずまき (ビッグコミックススペシャル)

うずまき (ビッグコミックススペシャル)

 

 *富江は原作の方がおすすめ。同じ伊藤順二ならうずまきも良い

ロードオブウォーはOPの段階で最高にセンスを感じる。紛争地帯に武器を売りさばく商人、死の商人の物語。一応事実に基づいてるので映画的な面白さの他に、伝記的な面白さもあって、少なくとも時間が無駄になる事は無い。というか、ネガティブな言い回しになってしまったけど、ぶっちゃけ普通に面白い。


LORD OF WAR - Intro (The Life Of A Bullet) [HD]

桐島、部活やめるってよは8か月ぶりに観たんだけど、最初に観たとき以上に自分に響いたと思う。8か月前は表面をなぞった、スクールカースト下位による革命という内容に目を奪われていたんだけど、今回はある意味で信仰そのものともいえる桐島の存在を通して、如何にしてこの息苦しい世の中を生きるか、というメッセージを受け取れた気がした。学校と言うのは人間の流動性が低いし、狭くて息苦しくて閉じたコミュニティになりがちだし、そこでは絶対化したステータスを元にコンプレックスに塗れた人間が誤魔化しながらスクールカーストに沿って過ごしている。この映画では、一度も姿を現さないが、勉強もスポーツも出来る超人的な桐島を中心に物語が進む。彼が何者かであるかは常に伝聞によってしか情報が与えられず、(鑑賞者を含めた)皆にとってのヒーローであり、神であった。そんな神ともいえる存在である桐島がある日部活をやめる。神の不在を契機に不協和音は共振し、伝播し、そしてクライマックスを迎える。積み木のように積みあがった軋轢が一度にして崩れ、それは大きなカタルシスを齎す。ここまでは初めに鑑賞した時の印象とさして変わらない。だが、この物語が描きたいのは、神の不在により引き起こされた諍いではなく、その先だと思う。

神は死んだ。それでも君たちのポジションは変わらないのだ。”この場所”で生きていかないといけないのだ。どこかのゲジマユ先生は「青春は爆発だ」と言ってるが、青春なんて大抵の人間にとっては煮え切らない、満たされる事のない時代だ。少なくとも、僕はそうだった。この映画でも、宏樹という人物が最後まで物語の中心人物の一人として存在する。彼は桐島のように何でも卒なくこなす要領のいい人間だが、野球部に所属しながらも、何かに打ちこみ切れない宙ぶらりんな青春を過ごしていた。なんで部活をやるんだ?部活をやってる奴が偉いのか?答えは、そうではない。彼は、「野球部の先輩がスカウトにかかる見込みが無くとも好きで野球を最後まで続けている姿」、「映画部の同級生が才能が無くとも自分の好きな映画と繋がる感覚を得られるからという理由で映画を撮り続けている姿」、これらを見て胸を打たれ、何か自分が好きな事に全力で取り組んでいるヤツが格好いいのだと知る。

桐島と言う絶対的存在が突如消え失せた事により、都合の良いエクスキューズとして彼を利用する事が出来なくなった皆は、己のアイデンティティと向き合わなければならなくなった。他己評価に依って生きていた人達は、何をしていいのかわからない、何を、何の為に頑張るのか。しかし、わからなくとも、この息苦しい世界で生きていかなければならない。神に縋る事は出来ない。好きなものを好きと言い続け、本気になれる何かを見つけなければならない。さぁ、二本足で立って生きていかねば。

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*どこかのゲジマユ先生

パルプフィクションは昔夏くらいに観たのだけど、『デスパレード』というアニメのOP映像を見たときに、「これ元ネタパルプフィクションじゃね?」と思って再度鑑賞した。やっぱり当たってたっぽい。意識の高いオタクだ。


デス・パレード OP / Death Parade

怒りの葡萄も多少は古臭いけど面白かった。七人の侍の前半部分という印象があった。あとサウスパークのS12E06Over Loggingという回でまんまパロディのシーンがあった事に気づかされた。"I'm going down the road feeling bad~~"という歌で「アッ!」ってなった。あと、タイトルの意味を色々考えたのだけれど、ラストの母親の台詞で

 I ain't never gonna be scared no more. I was, though.
 For a while it looked as though we was beat.
 Good and beat.
 Looked like we didn't have nobody in the whole wide world but enemies.
 Like nobody was friendly no more.
 Made me feel kinda bad and scared too, like we was lost and nobody cared....  
 Rich fellas come up and they die, and their kids ain't no good and they die out, but we keep a-coming.
 We're the people that live.
 They can't wipe us out, they can't lick us.
 We'll go on forever, Pa, cos we're the people.

(引用:怒りの葡萄(BD) | 映画と本と音楽にあふれた英語塾)

 というものがあって、確か和訳では「庶民は雑草の様にしぶとい」とかだったかな?これを考えると、葡萄の粒は庶民一人一人を表わし、たとえ実が地に落ちてもまた新たな房が成る。つまり怒りの葡萄とは、怒り憤る庶民達、みたいな意味合いかな~と思った。トラックにしがみつく彼らはまるで葡萄の房の様だ。

七人の侍 [Blu-ray]

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ぐを、大分記事が長くなったのでここら辺で。

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最近観た映画たち

好きな監督、嫌いな監督、段々と映画に関する知識が蓄積するとハッキリと分かってくるもので、面白いよね。なるべく新規開拓を行ってるつもりだけど、知らず知らずと偏りはあるのかも。

South Park 無修正映画版

サウスパーク 無修正映画版 [DVD]

サウスパーク 無修正映画版 [DVD]

 

 ・ミリオンダラーベイビー

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

 

 ・グラディエイター

グラディエーター [DVD]
 

 ・フィフティフィフティ

50/50 フィフティ・フィフティ [DVD]

50/50 フィフティ・フィフティ [DVD]

 

 ブレードランナー

 グッドウィルハンティング

グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち [Blu-ray]

グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち [Blu-ray]

 

 スローターハウス5

スローターハウス5 [DVD]

スローターハウス5 [DVD]

 

 明日に向かって撃て

 

South Parkの映画を初めて観たけど、明らかにデイズ二―を意識したようなミュージカル仕様になってて、喧嘩売ってる感が凄かった。あと、地獄に居るサダムフセイン閻魔大王っぽいのとアナルセックスしてるのとかも。全方位に中指立ててるのはもはや感心してしまうレベル。

ミリオンダラーベイビーは、パッケージング化されたハリウッド製お決まりのサクセスストーリーかと思いきや後半でいきなり転調して、描写されるどこまでも冷たい愛情に涙してしまった。”アメリカンスナイパー”を観たとき、イーストウッドはアメリカ神話という大きな虚構の解体に挑んでいる節があって、ミリオンダラーベイビーはアメリカンドリームのうすら寒さをうまく抉り出してて。この監督は行き過ぎる愛ゆえにアメリカ社会に唾を吐きかけている様に思える。若干ネタバレになるかもしれないけれど、メインキャラである女性ボクサーがスポーツの世界で大成する。後に大けがをするのだけれど、貧しい出自、いわゆるWhite Trash(Redneck)である彼女はお見舞いに来た両親含めた家族に自身の財産を集られる。これがアメリカンドリームの末路だと言わんばかりに。単に社会に対する警鐘以上のメッセージも込められてて、あと数十行は語れそう。まぁこの辺で。

 ブレードランナーファイナルカット版に関しては初の鑑賞。留学してた時も見たけど、あれは確かディレクターズカット版だったっぽい。調べると5種類ほどバージョンがあるらしい。原作と比較すると、やっぱりアンドロイドと人間の境界が曖昧化していくみたいな、違いの部分に焦点を当てるのではなく、アンドロイドと人間の共通項である命と存在目的に関するストーリーが展開されているという感じだった。いわゆるディック感覚と呼ばれるアイデンティティクライシスな内容は無くて、それを求める人にはあんまり味気ない映画なのかも。あとテンポが悪い。あ、同じリドリースコットと言う事でグラディエイターも鑑賞した。これはクッソ微妙やった。

SF繋がりになるけど、スローターハウス5も観た。これは原作も読んだけど映画の方が圧倒的に面白い。思わず同じ監督の明日に向かって撃ても観た。これらはどちらも傑作と言ってよい。スローターハウス5は、世界を4次元に、つまりあらゆる時間軸さえ知覚できるようになった主人公が、どのように生きるのかという事を描いた作品。作中に出てくる自由意思観みたいな部分は忠実に原作再現されてて、是非とも観て欲しい。運命は既に決定されてて、仮にそれを知覚して行動したとしても結果は変わらないなら、人間はどのように生きるべきなのか?作中のアンサーは”嫌なモノから目を背け、好きなものに集中する”という、主体性と自由意思に対する深い絶望が伺えるものだった。Wikiを見るに、ドレスデン空爆が作者に与えた影響は相当で、自身を納得させるためにこのような意思と時間の観念・創作物を産み出したのかと思うと何とも悲しい。天国ニョーボ*1を髣髴とさせる。

スローターハウス5

スローターハウス5

 

 

天国ニョーボ 1 (ビッグコミックス)

天国ニョーボ 1 (ビッグコミックス)

 

 命に関する映画と言えば、フィフティフィフティも見た。これはガンに冒された主人公の闘病というか日常の話だけど、なんか盛り上がりに欠けて、ずっと沸騰しないお湯みたいな感じ。

 

まぁ言及すべき映画はこんな所かな。

*1:

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South Park(サウスパーク)のおすすめエピソード

この半年間、熱狂的にハマったアニメがあります。それはSouth Park(サウスパーク)。かわいらしい切り絵のアニメーションから繰り出されるどす黒いユーモアをゲラゲラ笑い飛ばすのは本当に気持ちが良い。サウス(以下略称)は実は広告が邪魔だけどネットで全て鑑賞することが可能で、最新シーズンであるシーズン19まで公開されています。

この数か月をかけて、英語の勉強という名目のもと無限に視聴し、ついには完走をしたので、これからサウスを観てみたい、気になってるけどまだ観てないという人たちの為に個人的なオススメエピソードを紹介していきたいと思います。

*ちなみに、ネットでは英語か独語の音声、英語の字幕しかない。英語のScriptは公開されているので勉強に使える。

メインキャラ

さて、ここで未視聴者の為に軽くメインキャラだけ説明しておきます。不要な方は飛ばしてください。

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主人公は一番左のStan Marsh(通称:スタン)。平均的なアメリカ人をイメージして作られていて、メイン4人の中では暴走するカートマン達を止めに入る常識人なキャラ。ウェンディという彼女持ちで、クラスではイケメンの部類。

左から2番目のキャラはKeneth McCormick(通称:ケニー) 。オレンジのパーカーを常に着用していて何を言っているのか聞き取りにくいが、基本的に下品な言葉遣いをしている。サウスで一番貧乏な家庭であるが妹思いの少年。作中ではよく唐突に殺される。(しかし次の回になると平然と生き返っている)

一番右はEric Cartman(通称:カートマン)。ドイツ系のアメリカ人で肥満体系の差別主義者。性格は非常に悪く、シーズン5からサイコパスキャラが定着。しかし、どこか憎めないところがあり、サウスパークの人気キャラ投票では毎回上位にランクインする。母子家庭で、実はケニー家の次に貧しい。

右から2番目はKyle Broflovski(通称:カイル)。比較的裕福な家庭のユダヤ人。スタンと同じく常識人ではあるが神経質であり稀に暴走することも。差別主義者のカートマンとは犬猿の仲であり作中ではしばしば口論をしている。サウスにおいては終盤でエピソードのまとめ・教訓を語るオチ担当でもある。

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ここからはメインではないけど比較的出番の多いキャラを。

左から二番目はLoopold Stotch(通称:バターズ)。素直で子供らしい良心的なキャラであるが、それゆえにカートマンのいじりの対象となり、毎回振り回されている。両親がクズ親であり、よく外出禁止にされる。勉強の出来るアホ、という感じ。子供の中だと多分メインの4バカの次に出演が多い。

一番左端はToken Black(通称:トークン)。家はサウスパーク屈指の大金持ちで、本人も頭の回転が速く非常に聡明。しかし、黒人という事でよくカートマンにからかわれる。クラスの中ではイケメンの部類。

右から二番目はJimmy Vulmer(通称:ジミー)筋ジストロフィーという障害を持ち、常に杖を使って移動する。ジョークが好きでよくスタンドアップコメディーが得意であるが滑舌が悪く、よくどもる。

一番右端はCraig Tucker(通称:クレイグ)。口数の少ないキャラで、スタン達とは良く対立している。直ぐに中指を立てる問題児で、カウンセリングルームの常連。クラスのイケメンランキングでは1位だった。

 

実は、僕はバターズカートマンのコンビが大好きで、ちょっと彼らの出ているエピソード贔屓なところがあります。なんとも言えない子供らしさと扱ってる問題のギャップが良いんですよね~。そういえば、この2人は公式の人気キャラ投票でもかなり上位でした。

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おすすめエピソード

さて本題のおすすめエピソード。時系列順で昔のモノから紹介していこうと思います。以下、S*E#(シーズン*、エピソード#)という表記を用います。

・s05e01 Scott Tenorman Must Die

上級生のスコットテナーマンに騙されてチン毛を購入してしまったカートマンが、彼の両親を殺害してチリコンカーンに混ぜて食べさせる話。カートマンのサイコパスキャラを決定づけた伝説的エピソード。

・s05e06 Cartmanland

死んだ祖母の莫大な遺産を相続したカートマンは自分だけのエンターテインメント施設”カートマンランド”を設立。一方痔ろうで苦しむカイルは惨めな気持ちで苦しむが…

・s05e14 Butters's Very Own Episode

初めてバターズがメインとなる回。結婚記念日のプレゼントが気になった母親の命を受けて、父親の尾行をするバターズ。しかしハッテン場に父親が通っていることに母親は気づいてしまい、バターズを入水させ共に心中を図ろうとする。

・s06e02 Jared Has Aides

ジェラルドがサブウェイのサンドウィッチは健康に良いと吹聴していたが、実はエイズに冒されていたから体重が減っているだけだった。カートマン達もバターズを一度太らせて、そして痩せさせることで、チャイニーズフードは健康に良いとするマーケティングを試みる。

・s06e06 Professor Chaos

カートマン達にケニーの代役にはならないと貶されたバターズは、史上最凶の敵(ヴィラン)プロフェッサー・カオスに。カートマン達がケニーの代役オーディションを行う一方で、バターズはこの世に混沌を齎すべく、蛇口の水を出しっぱなしにしたり、レストランのオーダーに悪戯をする。

・s06e10 Babe's Boobs Society

クラスの女子ベイベが成長期に入り、胸が大きくなる。クラスの男子は巨乳に釘付けになり、全員猿化。ベイベの奪い合いが起こる。(猿化のシークエンスは2001年宇宙の旅のオマージュ?)

・s06e13 The Return of the Fellowing of the Ring to the Two Towers

スタン達は父親ランディの命を受けてロードオブザリングのビデオをバターズ家に届けようとする。しかし実は中身がハードコアポルノと入れ替わっていて… ポルノビデオを巡りサウスパーク中が大騒ぎに。

・s06e14 The Death Camp of Tolerance

ギャリソン先生は同性愛者であることをわざと差別される事によって、学校相手に裁判を起こし大金をせしめようと考える。アシスタントのスレイブ君相手に授業中濃厚なホモプレイを。不満を口にした子供たちは差別主義者とレッテル張りされ、デスキャンプに送られ…

・s07e11 Casa Bonita

カイルの誕生日会、友達3人がカサボニータに連れて行ってもらえることに。しかしスタン・ケニー・バターズが行くことに。是が非でもカサボニータに行きたいカートマンはバターズを軟禁し、何とか連れて行ってもらおうとするが…

・s07e14 Raisins

スタンがウェンディに振られて意気消沈。カイル達はスタンをRaisinsというレストランに連れて行き元気を出させようとする。そこはキャバクラの様な店でもあり、勘違いしたバターズが女の子に貢ぐ話。

・s08e02 AWESOM-O

ロボットのオーサムOがバターズの元に送られる。しかしそれは段ボールを被った只のカートマンだった。それに気づかず友達になったバターズは、カートマンの恥ずかしいビデオを持っていると漏らす。カートマンは何としてもビデオを処分するためロボットの振りを続けるが…

・s08e03 Up the Down Steroid

障碍者の為のスポーツ大会で、ジミーはステロイドを使用し優勝しようとする。一方でカートマンも優勝賞金の獲得のために障碍者の振りをして大会に参加。サウスパークのエピソードの中でも屈指の不謹慎な話。

・s08e10 Pre-School

幼稚園の頃消防士ごっこをしていたスタン達は園内イチの悪がきトレントに実際火をつけて貰う。しかし火は燃えあがり幼稚園は焼け落ち、先生は火だるまで植物人間に。全ての責任を押し付けられたトレントは少年院に入れられるが、ついに出所。スタン達はトレントの復讐に怯える。

・s09e06  The Death of Eric Cartman

スタン達が楽しみに待っていたKFCフライドチキンの皮を盗み食べたカートマン。次の日からスタン達はカートマンを無視するが、カートマンは自分が死んでしまい、他の人の目に映っていないのだと勘違いする。何も知らないバターズは自分だけカートマンの霊が見えているのだと勘違いし、彼の成仏の為の禊行脚に付き合う事になる。

・s10e02 Smug Alert

ハイブリッドカーを乗り始めて意識高い系と化したカイルの父は、家族そろってサンフランシスコへ引っ越しする。友達を取り戻すためにスタンはサウスパークでもハイブリッドカーを普及させる。しかしハイブリッドカーを乗り始めた人々から出たSmug Smog(自己満スモッグ)はハリケーンを生み、サンフランシスコに直撃。友を救うためにカートマンが立ち上がる。

 ・s10e07 Tsst

カートマンの母は息子のしつけに手を焼き、ついには犬の調教師を雇い息子をしつけようとする。しかし、それに辟易したカートマンは母親の殺害を決心する。

・s10e08 Make Love, Not Warcraft

ネットゲームのワークラフトにハマったスタン達。しかし、狂ゲーマーによりリスポーン地点で何度も殺されるスタン達は、何とかして狂ゲーマーの蛮行を止めるため、ワークラフトの世界を救うため、昼夜を通してレベル上げに勤しみ決戦に臨む。ワークラフトの実際のアバターが用いられて撮影されてる珍しい回。

・s11e02 Cartman Sucks

お泊り会でバターズに毎度悪戯をしていたカートマンは、面白半分にバターズのちんこを咥えた写真を撮る。それを見たカイルはカートマンに対してゲイだなと言い、逆にバターズにちんこを咥えてもらうとゲイでは無くなると嘘をつく。早速バターズの元に行きちんこを咥えさそうとするカートマンだが、バターズの父親がそれを目撃。父親はバターズを同性愛者と勘違いし、スペシャルキャンプに送って矯正させようとする。

・s11e08 Le Petit Tourette

スーパーで悪口を言う事を抑えられないトゥレット症候群の子供を見たカートマン。堂々と他人に悪口を言い放ちたいがために、トゥレット症候群を患っている振りをし始めるカートマンだが、やがて歯止めが効かなくなり…

・s11e14 The List

女子の間でクラスのイケメンランキングリストが作られていると知ったクラスの男子は、何とかしてリストを奪い自分の順位を確認する。なんと、カイルは最下位。塞ぎ込むカイルにスタンは同情すると共に、ランキングがどのように作られたのか調査に乗り出す。

・s12e06 Over Logging

ある日突然インターネットが使えなくなった。サウスパークは大混乱に陥り、インターネットを求める人々は近くのキャンプに避難する。そこは、整理券を受け取り、一人15分のインターネット使用許可しか与えられないという環境であった。(逃げるシーンとかは宇宙戦争のオマージュっぽい)

・s12e07 Super Fun Time

クラスで歴史村に行くことになった4年生達。同時にテロリストにより歴史村がジャックされるが、職員は歴史村のキャラを壊さないように演技をし続ける。一方で、こっそり歴史村から抜けてスーパーファンタイムで遊んでいたカートマンとバターズは先生の言いつけを守る事に必死で…

・s12e09 Breast Cancer Show Ever

ウェンディによる乳がんの発表を茶化したカートマンは、彼女から決闘を申し込まれる。喧嘩の弱いカートマンは自分のプライドを守りながら何とか決闘を中止させようと奔走するも、ガチ切れしたウェンディにボコボコにされる話。

・s12e12 About Last Night…

初めての黒人大統領誕生に沸き立つアメリカ合衆国。Yes, we canのフレーズが路上から漏れる中、オバマ大統領はヒラリークリントンや夫人達と共に史上最難度、ホワイトハウス近くの博物館から宝石を盗むミッションに挑む。(オーシャンズ11のオマージュ)

・s13e05 Fishsticks

カートマンとジミーは全米の横腹をよじらせる最高のジョークを思いついた。しかし、ジョークを一向に理解せず”ホモ魚”と呼ばれたラッパーのカニエウエストは激怒し、そのジョークの発案者を殺そうとする。

・s13e06 Pinewood Derby

 スタンとスタンの父ランディはパインウッドダービーに参加をするが、ランディは不正をして優勝するために、木の車に量子加速装置を付ける。これを見ていた宇宙人は宇宙船に取り付けるために地球人にコンタクトを取ってくる。

・s13e09 Butter's Bottom Bitch

まだキスもしたことが無かったバターズ。どうやら校舎裏に行くと5ドルでキスをしてくれる女の子が居ると聞きつけ、早速ハグとキスをしてもらう。このサービスに感動したバターズは女の子たちを集めてキス会社を作ろうとする。

・s14e02 The Tale of Scrotie McBoogerballs

出版禁止になっている”ライ麦畑でつかまえて”を読んだスタン達は、期待とは裏腹にあまり汚い内容ではなく失望。自分達でも汚い言葉を書き散らして小説を書いたが、タンスに保存していたものが母親にバレてしまった。思わずスタン達はバターズがやったと罪を擦り付けるが、その小説は高く評価され…

 ・s14e03 Medicial Fried Chicken

KFCは健康に悪いとされ、町から全ての店舗が消え、代わりに医療用のマリファナ販売店が設置されるようになった。スタンの父ランディ達はマリファナを合法的に吸うために睾丸ガンになり、一方でカートマンは非合法なKFCの取引を裏で行う。

・s14e04 You Have 0 Friends

フェイスブックにハマるカイルやカートマン。そんな彼らを冷ややかな目で見ていたスタンであるが、彼も周囲からの圧力に耐え切れずフェイスブックを始める。やがてスタンのアカウントは暴走を始め…

・s14e07 Crippled Summer

障碍を持った児童たちがサマーキャンプで競い合いをする事になった。ジミーに対抗心を燃やすネイサンはミンジーを使って様々な罠を設置するが、最終的には全て自分に跳ね返り、インディアンに襲われたりサメにアナルファックされたりする話。

・s14e14 Creme Fraiche

料理にハマったスタンの父ランディは、小学校のカフェテリアで働きだす。何とか彼の暴走を食い止めるべくスタン達は努力するが、世界的な料理人たちが集まって競い合う事になり…

・s15e04 T.M.I.

小学校の教員たちによってペニスのサイズが廊下に張り出されたと勘違いしたカートマンは大いに激怒。図らずも自身のムスコが短小である事を周りに知らせてしまったカートマンは、そのてんかん気質を直すために精神科に行く。

・s16e02 Cash For Gold

祖父から高価なネックレスをプレゼントしてもらったスタン。実はTVショッピングにて二束三文の品物が半ボケ老人に売りつけられているだけである事に気づいたスタンはその経済的循環を止めるためにインドまで足を運ぶ。一方でカートマンはそれを利用しビジネスを開始させるが…

・s16e03 Faith Hilling

大衆の面前で胸があるように服をつまむフェイスフィリングをしたカートマン。しかしこれら一連の行為は文化的遺伝子(ミーム)により決定づけられてるものであるとし、専門家はその危険性を説く。このエピソードでは様々なアメリカで流行った糞ポージングを知れるので面白い。

・s16e05 Butteballs

いじめ防止のために学校でバターズを主役にしたビデオを撮ろうとするが、ビデオを撮る過程で様々ないじめが発生する事になる話。

・s16e09 Raising the Bar

社会での”ハードル”が下がってしまった事で、恥知らずの肥満体が増えた。カートマンを始めとした巨体の人々はカートで移動をし、ハニーブーブーがYoutubeで持て囃されるようになる。そんな中、ある男が海底に沈んでいる”ハードル”を引き上げようとする。

・s16e10 Insecurity

カイルの両親から広まった誤解により、妻が実はUPI(配達会社)の男と寝ているのではないかと疑い始めたサウスの住人達。Amazonの利用を止める事も出来ないので、セキュリティー会社に頼んで妻が寝取られるのを防ごうとする。

・s17e05 Taming Strange

カイルの弟であるアイクの言葉遣いや見た目に変化が。カイルはカナダ人特有の思春期と考えるが、アイクの行動はエスカレートし、ヨーガバガバのフーファをアダルト方向でプロデュースし始める。

・s18e01 Go Fund Yourself

スタン達4人はキックスターターで新たな会社を立ち上げる。何もしないことによって他人からお金を頂くというコンセプトのベンチャーであり、巨大化していくが…  一部Tedのプレゼンとか意識高い系ベンチャーを鼻で笑うかのような内容で、最高に面白い。

・s18e02 Gulten Free Ebola

グルテンを摂取するとペニスが爆発して吹き飛んでしまうという感染病が蔓延したサウス。人々はグルテン含有食品を廃棄し、ピザ屋を隔離するが…

・s18e06 Freemium isn't Free

ギャンブルに対する依存度が高いマーシュ家。フリーミアムのゲームにスタンは大量課金を行う。やがてこれを裏から操っているのはカナダ政府であると知る。比較的新しい時事ネタで面白い。

・s18e07 Grounded Vindaloop

ここはVRの世界であるとバターズを騙すカートマン。しかし実はカートマンがVRの世界に入り込んでいただけであり、その事を指摘するカイル。だが、カイルも実はVRの世界に居るだけではないのかと不安になり… マトリクスとかインセプションっぽい内容。

・s19e04 You're Not Yelping

レビュワーサイトYelpを使う人々が、雨後の竹の子のごとくあちこちに出来た新しいレストランで良い待遇を受けようと、Yelpでの評価の☆の数を人質に悪態をつく。やがて町全体でヘイトが高まり…

・s19e06 Tweek × Craig

アジア系の生徒が増えたサウス。彼女たちの文化を学ぶために、BLやYAOIとは何かと言う発表の機会が設けられるが、そこでトゥイークとクレッグが絡み合うイラストが公開され、彼らはゲイのカップルであるのだと誤解されてしまう話。劇中歌のSay Something I'm Giving Up On Youは割とお気に入り。

・s19e07 Naughty Ninjas

スラムとなりつつあるSODOSOPAで子供たちは忍者の真似をして遊ぶ。しかし、大人たちは全身黒ずくめでナイフを振り回す子供を見てISISであると勘違いし、大騒動に。そしてこのエピソードは、続くs19e08-e10での大事件の引き金になる。

 

以上が僕のお気に入りです。他にももっと紹介したいエピソードがあるんですけど、今回はここら辺で。ザザッと読んで、あらすじで興味を持ったエピソードをとりあえずクリックしてみて下さい。きっとあなたの持つ自由な数十時間はサウスパークに搾り取られることでしょう。

レビュー:オデッセイ

先日2月4日に封切られた映画オデッセイを観てきたのでレビューをしようと思います。原作「火星の人」を先に読んでいた事もあって、いちいち引き合いに出すかもしれませんが、何卒ご容赦を。

あらすじ

火星での探査任務中、本作の主人公である宇宙飛行士のマーク・ワトニーらクルーは大嵐に見舞われる。突如、暴風で飛んできたアンテナがワトニーに突き刺さり、クルー達は彼が死亡したと判断。遺体を残して宇宙船ヘルメス号に乗り込み退避。だが、死んだと思われていたワトニーは、アンテナが突き刺さった事による出血のおかげで宇宙服の減圧を免れ生存していた! しかし地球からの援助は見込めず、次ミッションである4年後まで何とか火星で一人生き延びなければならない。残った水・空気・排泄物にわずかな食糧、植物学とエンジニアリングの知識、そしてなにより持前のポジティブで明るい気質を以てして彼は火星の厳しい環境をサバイバルしていく。

原作について

この映画の原作である「火星の人」に関して幾つかの情報を。実はこの小説、もともとは著者のHPで無料公開されていたみたいなんですけど、2011年にKindleで販売され始め、3か月であっという間に3万5000ダウンロードを達成するという異例の売り上げを見せて話題になった小説です。で、著者のHPで無料公開されていたのもあり、読者からのフィードバックを受けてSFとしての正確性を向上させていったみたいです。(まぁ火星は大気圧が低くて機体が損傷するような激しい嵐が発生する事は無いみたいですけど。)

 幾つかの点で不正確な部分はあるものの、NASAの人を雇って科学考証してるので、ヒドラジンから水素を抽出して酸素と一緒にして燃やし水を作るとか、放射線同位体熱電気転換機を使ってロバー内の温度を保つとか、実際に可能な方法で描かれている、らしい。このような科学考証がしっかりなされているのも魅力の一つです。

(参照:オデッセイ (映画) - Wikipedia)

火星の人

火星の人

 
 映画の感想

そして本題の、映画の感想なんですけど、ハッキリ言って原作の方が面白い。これは個人的にそう感じているだけなのかもしれないんですけど、作品の焦点として、今回マーケティングでも大々的に押し出されている「一人の宇宙飛行士の為に皆が、世界が、一致団結する」的な側面より、僕は宇宙版ロビンソンクルーソーみたいな「限界状態でも建設的な思考をし、順に問題解決をする」部分に強い魅力を感じていて、その部分が凄く薄められているように感じたのです。

初めにネガティブなポイントを述べておくと、まず配役が微妙。やっぱりマッドデイモンはボーンシリーズのイメージが強く残っていて、原作のワトニーのイメージと合わないんですよね。小説だと「イェイ!」とか「みーっけ!」とか言っちゃう陽気なナードの雰囲気があって、しかも高い社会性を兼ね備えているとも言及されてる。それを考えると、映画版は再現が微妙だったなと。サバイバルにおいてワトニーのポジティブな姿勢・思考がサバイバルの成功の大きな要因となっているのを考えると、もうちょっと忠実に演技して欲しかった。

次にSF考証。原作ではキッチリ描かれていた部分が映画ではテンポを考慮してか大きく省かれたり改変されたりしていて、割とガバガバ。火星の重力に関する映像は不要とは言えバッサリと省くと鑑賞側としては終始違和感が付きまとう。それに、宇宙服に穴が開いた時もとりあえずガムテープ張るか、みたいな感じで。原作だと何処に穴が開いたのか自分の髪の毛を燃やした煙の揺れで見つけ、他の宇宙服と樹脂を使って穴を埋め切り抜けていました。そういうのを考えると、こう、映画でそこ省略しちゃダメじゃない?みたいな部分が多かった。つーか、大体の問題をガムテープとビニールで解決しすぎなんだよなぁ…

そして謎のミュージカルパート、これがまたくどい。監督リドリースコットはエイリアンやブレードランナーの様な見応えあるSFを産み出してるし、今回のSFも期待できると思っていたけど、今回は演出にノイズが多かった気がする。映画を鑑賞する前に、ゴールデングローブ賞でミュージカル/コメディ部門の作品賞を受賞してるのを知って「え?」ってなってたけど、確かに作中で執拗に70年代ディスコの曲が流されてて。まぁそれは原作通りなんですけど何度も何度も流れるんですよね。3・4回くらい同じ演出が繰り返されて流石に胃もたれしました。

 

 *どちらも名作、ブレードランナーは原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」もおすすめ。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

 

 さて、ここまでマイナスポイントを述べましたが、それでも原作の魅力を100とすると、映画では80くらいは再現されていて、その部分だけでも十分に鑑賞するに値する映画にはなっています。

まずは主人公の前向きで建設的な思考。これは原作小説の大きな魅力ですが、映画でもある程度再現されていたと思います。サバイバルで、まず食糧が足りない→作物を作ろう→水が足りない→酸素と水素を燃やして作ろう→水素が無い→燃料から抽出しよう、みたいな問題解決を行っていくのは観てて面白いし、必ずしも成功ばかりでなく、試行錯誤していく過程も楽しめる。例えば酸素と水素を燃やすにしても初めは自分の排出する酸素量を計算に入れて無くて、部屋が吹き飛ぶとか、めちゃくちゃ笑えました。サバイバルの先輩ロビンソンクルーソーは「経済人」≪ホモ・エコノミクス≫なんて言われたりしますけど、それならワトニーは「科学人」≪ホモ・スキエンティア≫と言ったところでしょうか。

そしてテンポの良さ。さっきはミュージカルパートは不要とか断言しましたけど、まぁ何度も挿入する必要は無かった、程度の意味合いです。合間合間にミュージカルを挟みカットを多用して冗長な部分を削ることでストーリーラインをシンプル・スリムに見せているのは非常に良かったと思います。原作ファンは多少物足りなく感じるかもしれませんが、初見の人に目線を合わせた作りになっていて、「今何やってんの?」状態にならないような工夫がされていました。

あ、あと中盤で中国がNASAに協力してくるシークエンスに対して、一部では「中華資本によるプロパガンダ映画」とか「こんな綺麗な中国は存在しない」とか叩かれていますけど、これ全く原作通りなんですよね。宇宙映画と言えばアメリカとソ連の対立、みたいな冷戦脳からそろそろ脱却する時期な気もします。一応中国も月面着陸成功してますし、宇宙開発に力入れてる国ですよ。そしてあの中国すらも一人の宇宙飛行士を救出する為に救いの手を差し出す、世界が一致団結する、というピースでハッピーな内容なんですから、実際の政治を持ち出してどうこう言うのはナンセンスでしょう。

 

長々と書きましたが、初めに言ったとおり原作の方が面白いです。ただ映画単体で見ても他の映画と比べると十分に完成されている映画ですので、お金を出して観に行く価値はあると思います。

では、今日はこの辺で。

最近観た映画たち

大学生最後のテスト期間も終わり、またちょくちょくと映画鑑賞を再開させている。ハズレを引くこともあればアタリを引くこともあるが、今回は割とアタリが多い気がする。

・工事中(en construcción)

工事中 [DVD]

工事中 [DVD]

 

 少林サッカー

少林サッカー [Blu-ray]

少林サッカー [Blu-ray]

 

 シザーハンズ

 ・ブレアウィッチプロジェクト

 ・セブン

セブン [DVD]

セブン [DVD]

 

 ・白鯨との闘い

 ・オデッセイ

 タイピスト

タイピスト!(字幕版)
 

 プラダを着た悪魔

 ・ヘザース

ヘザース [DVD]

ヘザース [DVD]

 

 ・アンテナ

アンテナ スペシャル・エディション [DVD]

アンテナ スペシャル・エディション [DVD]

 

 バチカンで逢いましょう

 ・ボビーフィッシャーを探して

ボビー・フィッシャーを探して [DVD]

ボビー・フィッシャーを探して [DVD]

 

 ・サプライズ

サプライズ [Blu-ray]

サプライズ [Blu-ray]

 

 ・アメリカンスナイパー

アメリカン・スナイパー [DVD]

アメリカン・スナイパー [DVD]

 

 

多分個別でレビューするヤツもあるので、かいつまんで今回観た映画の紹介というか感想を述べていきます。

まず工事中。これは今回の映画たちの中では唯一のドキュメンタリー映画で、開発されゆくバルセロナのスラム街の一角を、まるで定点観測したような、ヤマ無しオチ無しの凄く平坦な作品です。でも、凄く面白い。定点観測とは言いましたが、その町に根付いた人々の生活や息遣いがスクリーン越しに臭い立ってくるようです。過去、現在の映像を交差させながら、両の手で優しく掬い取られた町の1シーンや変化しつつある景色は、まるで生き物みたいで。娼婦とヒモのカップルやレンガ職人等は勿論フィクションでしょうが、それ以外は全くのすっぴんの映像で、これを130分流すだけ、流すだけと言ってもどのシーンも欠かすことが出来ない必然性を持っていて、それが一つのテンポを生み、変化していく町そのものの輪郭を映し出しているのは感服しました。

ちょっとググったら他にも結構沢山映画撮ってるみたいだしチャンスがあれば観たい。

 

で、次はブレアウィッチプロジェクト。コイツはドキュメンタリーと言いながらも、要は、モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)作品で、その分野の先駆けともいえる存在です。古典やし観とくか、程度の気持ちで観たけど映像に引き込まれました。話としては魔女の伝説を取材しに大学生3人が森の中に入り、奇妙な出来事に遭遇するという至極単純なプロットで、低予算の為魔女が出てくるわけでもなく、ビデオカメラ直撮りのため揺れる映像で、鑑賞者を選ぶ作品である事は違い無いです。最終的に謎が明かされる事も無く、不満を感じる方も多いハズです。自分的にはクローバーフィールドRECと比べるとわざとらしい”サービスショット”が無くて好感を持てたかな。あ、そう言えば一緒に鑑賞した同居人は放送禁止の方が面白いと言ってた。当たり前だよなぁ。

 

REC/レック [Blu-ray]

REC/レック [Blu-ray]

 

 

放送禁止 DVD封印BOX

放送禁止 DVD封印BOX

 

 

セブンはデビットフィンチャー好きなら観ておくべきかと思い鑑賞。七つの大罪に準えた殺人が起こり、新米刑事がシリアルキラーを追い詰める話。これを鑑賞して初めてフィンチャーが何故ファイトクラブのラストシーンを原作から改変したのか、その意味に気づいた。普通にネタバレになるのだけれど、セブンではブラッドピット演じる新米刑事のミルズが、シリアルキラーに嫁を殺され、怒りに打ち震え犯人を殺そうとする。しかし、犯人の計画の中では、自分が殺されることで初めて連続殺人が完結するというもので、だからこそミルズは己に抗おうとする。しかしミルズは抵抗虚しく引き金を引く。これに対して、ファイトクラブでは主人公が、ブラッドピット演じるテイラーに追い詰められながらもテイラーの頬を銃で打ち抜き、幸福感に包まれながらも崩壊していくビルに消える。この、大きな力の前で無力に苛まされた時、それでも自分の意思で決定をして選択をして結末を導くという自由意思がフィンチャーによるセブンのラストに対するアンサーなんです。セブンで選択を行えなかったブラピは、ファイトクラブで頬を打ち抜かれるブラピとして否定されてるんだなぁと。セブンは観たけどファイトクラブを観てない人は必ずセットで観た方が良いという事を言いたい。

 サプライズは、邦題よりも原題のYou’re the Next(次はお前だ)の方がまさしく正確なタイトルだと思った。というかホラー映画なんてサプライズがあって当たり前なのに、わざわざタイトルにぶち込んで自らハードル上げるような事すんなよ…

ボビーフィッシャーを探しては隠れた名作っぽい感じ。(隠れてない?) 内容を一言で表すなら「孟母三遷」かな。プロのチェスプライヤーを目指す子供とその両親による物語で実話ベースだったみたいなんですけど、子供の教育って難しいんですね。

 

うう。今回は名作が多かったのでもっと書きたい事があるぞ… オデッセイ、プラダを着た悪魔、アメリカンスナイパーは個別記事を書きます(多分)

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レビュー:白鯨との闘い

1月16日から封切られた『白鯨との闘い』を早速観てきました。先に言っておくと、この映画、邦題が本気でクソです。

”闘い”って何だよ、邦題決めた奴は中身ちゃんと観たのか?大概にせえよ。

内容自体は非常に映像のクオリティが高くて満足でした。初めにまだ鑑賞していない方に向けてのレビューをしたあと、ネタバレを含む考察を述べていこうかな、と思います。(とは言っても『白鯨』読んでないクソ雑魚なので気が引ける…)

 あらすじと周辺情報

この映画はノンフィクション小説である『復讐する海:捕鯨船エセックス号の悲劇』を原作としています。この事件からインスピレーションを受けてメルヴィルはあの有名な『白鯨』を書き上げています。要は、今回の映画は『白鯨』の元になったエセックス号事件の映像化、と言う事です。

復讐する海―捕鯨船エセックス号の悲劇

復讐する海―捕鯨船エセックス号の悲劇

 

 映画の構造としては、当時のエセックス号事件を経験した者のうちの唯一の生き残りであるトマスという老爺の元に新進気鋭の小説家メルヴィンが訪れ、次の小説の為に事件の真相を聞き出しに来ている、というシチュエーションから始まります。言うまでもありませんが『白鯨』の作者であるメルヴィンが狂言回し的な役割として登場しているのです。ナレーターであるトマスは、この事件は2人の登場人物、つまり船長のポラードと一等航海士のチェイスの物語であると前置きし、話を進めます。 

1819年、鯨油が世界のエネルギー供給において重要な役割を果たしており、街灯の明かりも鯨油によって支えられている様な時代、腕利きの捕鯨屋であるチェイスは家柄だけで船長に選ばれた未熟なポラードと捕鯨基地を出港し、2000樽もの量の鯨油を求めて捕鯨基地から出港します。(作中では鯨を一匹仕留めるシークエンスがありますが、そこから採られたのが50樽程度であった事から、相当な量の捕鯨をする必要があると推察されます。) ちなみに語り手のトマスは当時は14歳の最年少でした。

しかし、1年以上の航海を経ても十分な量の鯨油を集められないエセックス号。船長と航海士の対立は先鋭化し、乗組員の間でもフラストレーションが高まります。途中立ち寄った港にてマッコウクジラの大群に関する噂を聞き、彼らの利害は一致。陸地から4000キロ以上離れた海域まで帆を上げて進むエセックス号。ついには、鯨の大群を見つけます。しかしそこには30m以上はあろう巨大な白鯨が存在し…

 

というのが大まかなあらすじです。

映画の感想としては、まず映像のクオリティが非常に高く、これは実際に映画館に足を運んで観るまでの価値があると思います。当時の商業的な捕鯨活動を物凄くリアルに再現していて、最初に港を出発する際の帆を張るシーンだけでも本当に一仕事と言う感じです。また鯨から油を採集、特に貴重である脳油の採集の場面も、「あぁこういう風に採ってたのか」と知る事が出来て興味深いものでした。そして、質量感のある迫力の捕鯨シーン、波が激しく砕ける嵐のシーン、どこもCGで描かれているんでしょうけど、違和感が全くなく引き付けられるような映像になっています。

あと、ちょっと全体的に黄色がかっている色調が、セピアっぽさを演出していて、ストーリーテリングとしても割と成功している演出になっています。あまり色調がビビッドだと嘘臭さがありますし。

物語の内容に関してですか、若干言葉足らずな部分があります。また、最後にポラードとチェイスの顛末がちゃんと語られますが、見る人によっては単なる伝記としか感じられないのかもしれません。まぁ、ドキュメンタリー以上の価値を見出せなくても、映像それだけで十分にレベルの高い作品になっていると思うので個人的にはお勧め出来る映画です。

考察(ネタバレ含)

重ね重ね言いますが、この邦題は非常に残念なものになっています。きっとマーケティング的にはジョーズの様なモンスターパニック、あるいはアクション映画として訴求したかったのでしょうが、この映画の持つ本来の意味合いを大きく削ぐ事に一役買っています。本来のタイトルは”In the heart of the sea”、直訳すると「海の心(臓)で」「大海原の奥深くで」みたいな感じでしょうか。白鯨はあくまでも象徴的なモチーフで、実はスポットが当てられているのは、海、自然の部分にあります。

この映画においては時代背景が一定効いている様に思います。つまり、捕鯨によって獲得される鯨油によりエネルギーが支えられていた時代、あまりに進む乱獲によって鯨は絶滅危惧種になりつつあります。これは実際に映画の映像からも読み取れて、鯨油市場が急速に拡大すると共に、値段が上昇しつつある描写がなされています。

主人公一行に三度立ちはだかる白鯨、これは鑑賞前はアルビノの様な綺麗で神秘的な純白をイメージしていましたが、体表に沢山の傷を受けて全体的に白く見えているだけの様でした。どうやらちょっと調べたところ、マッコウクジラは捕食するダイオウイカからのひっかき傷や一部個体では加齢とともに体色が薄くなることがあるそうです。何が言いたいかと言うと、この白鯨はその全身に刻まれた傷や30mを超えるようなサイズから察するに相当年数を重ねた鯨であり、先に述べたような人間の捕鯨の歴史の中で生き延びているのです。つまりこの鯨は人間により危機に晒されている鯨の象徴とも言える存在であります。この映画の世界観においては鯨を「神の作り出したモンスター、悪魔」と人間側の口から言わせていて、あたかも超克すべき対象の様に表現しています。しかしながら実際にその通りだったのでしょうか?

三度目に白鯨と相対した時、船長のポラードは「殺せ!」と叫び、実際、ベテランの航海士チェイスは絶好の機会を獲得します。が、彼は銛を構えたところで、白鯨との強烈なシンパシーを感じ、振り上げた銛をゆっくりと下げてしまいます。”大海原の奥深くで”、”海(自然)の心(心臓=鯨)”に相対したチェイスは、新たな視点を獲得していたのです。それは、二度目の白鯨の襲撃以後に体験した漂流という限界状況、自然の乏しい無人島生活、自然は挑む対象ではなく、圧倒的に君臨する存在であるという視点です。目先の利益を追求し自然を搾取し続けた結果、自然から大きなしっぺ返しを食らい、大海原に漂流した時には、人間が人間を食べるハメになりました。人肉を食べるときは心臓から食べた、この行為には深い意味が込められていると考えずにはいられません。

≪自然⇔人間≫という構図はベッタベタですけど、露骨過ぎもせず、鼻につくことなく映画の後景に配置されていた様に思います。前半は目に見える巨大な鯨との戦いに圧倒されますが、後半では目に見えない、大海原や無人島での焦燥・不安・餓え・乾き等との戦いにシフトし、やはり、白鯨がどうこうというよりは全体を通してみても自然に放り込まれたときの人間の矮小さみたいな部分が扱われている作品でした。

ちなみに最後にトマスとメルヴィンとの会話で石油に関して、海からではなく地面から油が取れるようになった、という言及がされていました。これは単純に鯨油の時代が終わりを告げるであろうという事以上に、石油においても全く同じ過ちが繰り返されるであろうというインプリケーションとして僕は捉えました。海の資源が枯渇しかけたら、今度は地面の資源。人間は変わらないものです。この最後の一コマがまた物語に深みを与えていた様にも感じます。

 

考察はこんなところでしょうか。ポラードとチェイスの顛末の対比やその他の細かい部分にも触れたかったんですけど、長くなったのでこの辺で。

こんなレビュー書いてる暇あったら『白鯨』読むかぁ。

白鯨 上 (岩波文庫)

白鯨 上 (岩波文庫)